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裁判の申立手続
・裁判の申立手続
裁判の申立をするには、(1)申立先の確認、(2)必要書類の提出、の二つの手続が最低限必要になります。そこで、以下概要を説明致します。
・申立先の確認
裁判を申し立てる場合、最初にどの裁判所に申立てをするかを確認する必要があります。
裁判は管轄が存在する裁判所に申立てをしなければならないという決まりがあり、その管轄には様々な種類があります。具体的な細かい説明はここでは省略しますが、重要なものは(1)土地管轄と(2)事物管轄です。
土地管轄とは、どの地域で裁判を起こせるかであり、原則として、被告の住所地(法人であれば主たる事務所)を管轄する裁判所に申立てをしなければなりません。
事物管轄とは、第1審が簡易裁判所と地方裁判所のどちらになるかの定めであり、訴訟物の目的物の価格が140万円を超えない請求は簡易裁判所、それ以外は地方裁判所に申し立てる必要があります(なお家事事件の裁判の場合は金額に関わらず家庭裁判所に申立てをします)。
この土地管轄と事物管轄を勘案したうえで、管轄のある裁判所に対し、申立てをする必要があります。
・必要書類
申立先の裁判所が決まった場合、裁判所の事件受付係に以下の書面や附属物を提出して裁判を申立てます。
<必要書類:必須のもの>
(1)訴状
(2)証拠説明書
(3)証拠
(4)郵便切手
(5)収入印紙
<必要書類:事件の内容によっては、さらに提出が必要なもの>
(6)商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
(7)不動産登記簿謄本(全部事項証明書)
(8)固定資産税評価証明書
(9)戸籍謄本 など
・訴状について
まず(1)の訴状ですがこれはいわゆる裁判の申立書にあたります。訴状については裁判所用に1部、被告用に1部、の2部の提出が必要です。被告が多数いる場合は、被告全てに1部ずつ提出しますので、例えば被告が5名の場合、裁判所に提出する訴状は合計6分になります(内訳:裁判所1部、被告5部)。
訴状には、少なくとも以下の内容の記載が必要です(民事訴訟法133条2項)。
ア 当事者および法定代理人
イ 請求の趣旨及び原因
また、これだけでは不十分なので通常は、
ウ 訴状の表題
エ 作成日付
オ 提出先裁判所名
などを合わせて記載します。
訴状に記載する具体的な内容については、個々の事件の内容によるほか、本来は専門家に作成してもらう部分ですので、詳述は控えますが、おおよそ「この裁判でなにを求めるか」、「その理由は何か」といったことを丁寧に説明することが必要となります。
なお、簡易裁判所に対しては、口頭で裁判の申立もできるとされていますが(民事訴訟法271条)、書面化して提出したほうがスムーズですので、訴状の提出をして申立を行ってください。
・証拠、証拠説明書について
裁判では証拠に基づいて、最終的に判決がでますので、自分の主張を裏付けるためには証拠の提出が必要となります(訴状同様、裁判所用1部と被告の人数分)。
ただ、証拠はわかりやすく整理して提出しないと、裁判所も混乱します(ある裁判官の話ですが、弁護士を就けずに訴訟を進めていた当事者が、整理されていない証拠を漫然と度々提出するので、「こんなゴミみたいな書面を大量に裁判所に送り付けられても困る」「こんなの読めない」といって直接その方に怒っていました)。
そこで重要になるのが、証拠番号と証拠説明書になります。訴状の中で、証拠を引用した場合、その証拠に番号を付してあれば、裁判所は分かりやすく証拠と主張を関連づけることができるので、提出する証拠には、必ず通しで証拠番号をつけます。原告側は通常「甲号証」を提出し、被告側は「乙号証」を提出するので、原告側として証拠を3種類提出する場合、それぞれ「甲1号証」「甲2号証」「甲3号証」と番号を付けて、提出します。
また証拠説明書は証拠の一覧表であり、各証拠の番号と証拠の名称、証拠は原本か写しか、証拠によって証明しようとする事実は何か、を記載した一覧表を作成して提出します。
・郵便切手・収入印紙
裁判を提起する場合、郵便切手と収入印紙の提出が合わせて必要になります。
郵便切手は、裁判所が当事者に郵便物を送付するために使用されます。収入印紙は、裁判を提起するための手数料として納付が必要です。
この郵便切手と収入印紙をどれくらい納付するかについては、各裁判所や裁判の内容によって全く変わってきます。そのためそれぞれの裁判所のホームページなどで確認するか、あるいは申立ての際に窓口の書記官の方に問い合わせて、再度必要な切手と印紙を用意してから正式に申し立てる、という形がよいかと考えます。
なお収入印紙は訴状に貼って提出するとされていますが、当事者の申立の場合、金額を誤ることや貼り付け場所に間違いが起きることもありますので、収入印紙は現物のまま受付窓口に提出していただく形でよいと思います(有り難いことに、裁判所書記官の方に丁寧に訴状に印紙を貼ってもらえます)。
・その他の附属書類
どの事件にどの附属書類が必要かは、非常に専門的になりますので、ここでは省略しますが、これらの書類は申立後に追完することができます。そのため、一旦裁判を申し立てたうえで、後日裁判所書記官から追完を命じられた場合にその際に提出する、という扱いでもよいと考えます。
・裁判申立て完了
申立が完了すると裁判所から「事件番号」を伝えられます。たとえば、「令和○年(ワ)第3400号」などです。この時点で、裁判所に自分の申し立てた事件が正式に受理されたことがわかります。
この後は、いよいよ裁判を進めていくことになります。途中から弁護士をつけることもできますので、裁判を進めていく中で難しい法律上の主張がでてきたり、裁判官がこちらに不利な見通しを説明するなど「まずい」と思ったら、弁護士に依頼することをご検討ください。