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強制執行の申立手続

・強制執行の種類
強制執行は主に判決などの「債務名義」と呼ばれる書面の内容を強制的に実現するための制度です。また担保権の実行を行うことも強制執行です。
強制執行をご自身で行う場合には、まずどのような執行を行うかを検討しなければなりません。

・金銭執行と非金銭執行
よく判決で「被告は原告に対し、金100万円を支払え」といった金銭の支払いを命じる主文が出されます。
このような金銭の支払いを実現させる執行を「金銭執行」といい、一番多い類型の執行と考えられます。
他方で、金銭以外の内容を実現させる方法の執行を「非金銭執行」といい、不動産の明け渡し請求などがあります。
まず判決などの債務名義の内容を確認して、どちらのタイプの執行が必要か検討します。

・執行対象の検討
金銭執行を行う場合に次に検討すべきは、相手のどの財産に執行するか、です。
金銭執行は、相手の財産を強制的に処分するなどして、金銭的満足をうける執行方法ですが、相手の財産を特定しないと強制執行は行えません。そこで、何を執行するかを次に検討する必要があります。
執行できる財産の種類としては、主に不動産、債権、動産があります。そこで、強制執行する相手の財産を調査して(通常は弁護士に依頼するなどします)、強制執行の対象の財産を特定してください。
なお、非金銭執行の場合は、執行対象はその内容によって変わるので(例:不動産の明渡しの強制執行であればその不動産を対象にします)、ここでの説明は割愛します。

・強制執行の申立手続
上記のように、執行の種類を選択した後は、いよいよ強制執行の申立てを行うことになります。
申立方法は、必要書類を揃えたうえで、管轄のある執行裁判所(通常は、地方裁判所の強制執行手続を受け付ける部署です)宛てにそれらを提出する方法で行います。
申立てに必要な書類は原則として以下のものです。
 (1)強制執行申立書(当事者目録、請求債権目録、物件(差押債権)目録なども)
 (2)執行文の付与のある債務名義の正本
 (3)債務名義の送達証明書
 (4)収入印紙
 (5)郵便切手

・申立手続の補足
債務名義とは、先ほどは判決を例として挙げましたが、正確には民事執行法22条に記載があり、調停調書や和解調書、執行証書など様々な例があります。
強制執行をするためには、原則としてこの債務名義の「正本」が必要であり、通常はその債務名義を作成した場所(裁判所など)で申請すれば作成してもらえます。調停などでは和解調書の「謄本」は作成しますが「正本」は作成していないことなどもありますので、お手元の書類がどのタイプかは事前に確認が必要です。
また執行文とは、簡単に言えば「執行できますよ」というお墨付きのことであり、債務名義を作成した場所で付与してもらうことができます(「執行文の付与の申立て」などをします)。これによって単なる債務名義が「執行文の付与のある債務名義」になります。
次に、このように執行文の付与のある債務名義の正本を入手したとしても、その正本が相手にきちんと届いていなければ、強制執行はできないものとされていますので(民事執行法29条前段、規20条)、債務名義がきちんと相手に届いたという証明書である「送達証明書」の入手も必要です(こちらの書類も、債務名義を作成したところで作成してもらいます)。
これらの書類が揃うと、いよいよ強制執行の申立てが行えることになります。
なお、手続の種類によっては、さらに必要な書類があったり、逆に不要な書類もあったりします。そのため、ご不安であれば専門家に依頼することをお勧めします。