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法律と倫理律

これは一般的な議論ではないとは思うのですが、世の中には法律と倫理律(道徳律)が存在します。倫理律とは、道義上こうあるべきといった概念や、良心・マナーなどを想像していただけたらわかりやすいかもしれません。
たとえば優先席に若く健康な自分が座っているとして、目の前に妊婦さんとお年寄りの方が立っていて、座れない状況だとします。この場合、自分が席を譲らなかったとしても法律には違反しませんが、後ろめたい気持ちが生じます。これは倫理律に違反したという状況でありますが、法律には違反していないので裁判では裁くことはできません。
このような法律と倫理律の差は法的な解決を考えなければならない場面では重要であり、裁判を提起できるかどうかの判断に影響を与えます。相手の行為は道義的におかしいという場面でも、裁判を起こすにはハードルがあり、妥当・不当の問題を超えて法律に違反したという「違法」を主張しなければなりません。
そのためどうしても裁判のみでは解決できない場面もあり、これが司法の限界ということになります。法律相談にお越しいただいた時にこのような理由から解決できないケースもありますので、この点は当職としても心苦しく思いますがご容赦いただければと思います。