←事務所ページTOPへ戻る
 ←図書館・コラムTOPへ戻る

破産の自由財産制度について

・自由財産制度とは
「破産」という制度は、おおよそ自分の財産をすべて吐き出した後に残った負債について免除してもらえる制度であるということはすでに別の欄(債務を抱えた場合)で紹介しましたが、文字通りに財産をすべて吐き出すと生活ができなくなってしまいますから、法律上「自由財産」という形で、この財産は手元に持ったままの状態で破産を認めてあげますよ、という例外を設けています。
この「自由財産」には法律上最初から自由財産と決められている本来的自由財産と、裁判所や管財人の判断で追加で拡張して認められる拡張自由財産の2種類があります。
以下それぞれどのようなものがあるかを解説致します。

・本来的自由財産
以下のものは、法律上当然に自由財産として扱うことが認められています。
(1)99万円に満つるまでの現金
  (破産法34条3項1号、民事執行法131条3号、民執令1条)
   預金になっているものはここに含まれませんので注意が必要です。
(2)差押禁止財産(破産法34条3項2号)
 ア 民事執行法上の差押禁止動産(民事執行法131条)
   生活に欠くことができない家財道具など
 イ 民事執行法上の差押禁止債権(民事執行法152条)
   退職金債権の4分の3
   (現実に退職していない場合は8分の7相当額)
 ウ 特別法上の差押禁止債権
   生活保護受給権(生活保護法58条)
   各種年金受給権(国民年金法24条、厚生年金法41条他)
   小規模企業共済受給権(小規模企業共済法15条)
   中小企業退職金共済受給権(中小企業退職金共済法20条)

・拡張自由財産
上記のほかに、自由財産の拡張という制度で認められる自由財産がこちらに該当します。
どのような財産について自由財産の拡張が認められるかについては各地域の裁判所ごとに微妙に取扱いに幅があるように感じますし、最終的に拡張が認められるかについては生活状況などの総合的な事情に基づいて判断されますので、個別の事案ごとに判断は分かれます。そのため画一的にこれが自由財産の拡張の対象となりますとは案内できないのですが、概ね以下のようなものについては自由財産の拡張の対象となることが多いです。
(1)預貯金口座の合計額20万円以下の部分
(2)各保険の保険解約返戻金の合計額が20万円以下の時の各保険
(3)処分見込価格20万円以下の自動車
(4)居住家屋の敷金返還請求権
また、上記の財産以外にも総額(評価額含め)でおおよそ99万円までの範囲内であれば、柔軟に自由財産の拡張を認めるという運用もあるほか、総額99万円以上についても自由財産の拡張が認められるという稀なケースもあります。ただしこれらについては、現在の生活状況や財産が必要な事情を考慮するほかに、負債発生に至った原因なども勘案して判断されますので(例えば99万円未満の財産であっても宝石類などは今後の生活に不要とされ換価の対象になりえますし、借金して浪費のうえで作った財産も換価の対象となりえます)、ご不安の場合は個別の事案ごとに弁護士に相談なさってみてください。