←事務所ページTOPへ戻る
 ←図書館・コラムTOPへ戻る

契約書リーガルチェックで確認すべき事項

別欄(契約書を締結する前に注意すること)において、契約締結前にはできるだけ契約書の確認を行い、不利な取引から身を守る必要性があることについてご紹介しました。
以下、標準的な契約書のリーガルチェックの際に確認すべき事項を、一般の方向けに要点のみ簡単にまとめましたのでご参考になさってください(なおこのリーガルチェックは専門的知識がある程度ないと難しく、また個々の事務所ごとに専門度合いも異なりいわばノウハウの塊ともなっていますので、こちらでは細かいところまでは挙げず概要のみに留めます)。

(1)契約が不明瞭でないか、何の契約かきちんとわかるようになっているか
何よりもまず、契約の内容がきちんと明確になっているかを確認してください。売買契約書や請負契約書のような、双方がそれぞれ義務を負うタイプの契約では、こちらが何をしたら相手に何をしてもらえるのかがきちんと契約書で示されているか確認してください。
またよくわからない言葉や、契約書に特に定義もなく「等(など)」というぼやかした言葉が多用されていないかも確認してみてください。
曖昧な契約の場合は後で絶対にトラブルになりますので、契約内容が不明確な場合、まずは契約を明確化することが重要です。
この点でよく問題になるタイプとしては、業務委託契約書というタイトルでありながら単なる事務の委任契約なのか、仕事の完成を目的とした請負契約なのかがぼやかされているようなケースです。解釈に幅があるような契約の場合、裁判では相手は確実に自分有利の内容で契約を主張してきますから、それを避けるためにも契約の明確化は必須です。

(2)法律の規定以上に有利・不利な点を定める条項がないか
通常約束を守らなかった時は債務不履行という形で相手に生じた賠償することになりますが、これについてはそもそも契約で定めなくとも当然のことですので民法で定められています(民法415条)。
ただ、契約書で賠償ができるケースをわざわざ制限的に列挙したり、故意または重過失がなければ賠償を請求できないというように賠償が請求できるケースを制限したり(単なる過失のみでは請求できなくなる)、あるいは損害の賠償の範囲がやたら広げられていたり逆にやたら狭くなっていたりすることがあります。
このように両者の公平を意図して作られたはずの民法の規定をねじまげるタイプの契約は、合理的な理由がなければ相手を利するためのものですから、よく注意して見てください。
ただし、取引事故がもともとおこりやすいタイプの契約など、合理的な理由があって民法の規定とは違う定め方をしていることもありますので、こういった細かい解釈の差を知ることについては専門的な知見が必要かと思います。

(3)相手方に広い裁量があるような規定はないか
単純に「相手に広い裁量がある=こちらが不利」ということです。
たとえば「(甲または乙が)本契約に違反したときは契約を解除できる」というような条項は大抵どんな契約書にも記載がありますが、かつて見たことがある契約書では「甲が本契約に違反したと乙が判断した時は乙は契約を解除できる」と相手(乙)に契約解除の判断権が与えられていたのです。こうなると乙による無条件契約解除を認めたのと同様の規定になります。
これは極端な例としても、相手方が色々指定できたり、相手の判断で契約を動かせるような場合はこちらは相手より立場が低くなりますから、こちらにとっては相当不利な契約ということになります。この点は注意して見てください。

(4)直感的に不信な契約ではないか
これまでに述べてきたことが重要な点ですが、長年の経験からして、この契約はこちらに利益を出させる意図はないな・・と感じる契約があることがあります。
これについてはこちらで詳細を述べることは難しいのですが、契約書の全体を見てなんだか相手の守りの姿勢をひしひしと感じるとか、危なそうだなと思ったとき、その直感が正しいことが多いように思います。そのためここまで述べてきてなんですが、最後は直感も大切だと考えます。

そのほかにも様々考慮すべき点はありますが、一般の方向けのアドバイスとして特に重要な点は以上ですので、今後の契約書締結の際に参考になさってみてください。